ちせログ

スウェーデンに留学したり、文系で修士取ったりしている人のブログ。

正しい日本文化を伝えようとする番組、「ぶっこみジャパニーズ」がなぜ気持ち悪いかわかった

みなさんは、「正しい」日本文化って

あると思いますか?

 

私はスウェーデンに留学中、

お寿司屋さんで食べた巻きずしに

クリームチーズが入っていたことがあります。

 

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このとき私は大変驚いたので、

留学仲間のアメリカ人の友人に

この驚きを伝えようとしたのですが、


「寿司にチーズはポピュラーだよ」

と言われてしまいました。

 

もしかしたら、私が知らないだけで

世界ではクリームチーズ寿司が流行っているのかもしれません。

少なくとも、私はあんまり美味しいと思わなかったけど…笑

 

 

 …今回取り上げるのは、

このような、「正しくない」日本文化を

正そう!とする、

「ぶっこみジャパニーズ」

という不定期番組です。

 

www.tbs.co.jp

 

いま世界中で大人気の日本文化「クールジャパン」。
しかし、修業もせずにブームに乗っかった「ニセジャパン」が海外で急増中…。
そんなダメダメな「ニセジャパン」を、日本が誇るカリスマたちが正体を隠して潜入調査。
各分野の和のカリスマが「ニセジャパン」をドッキリ指導し、正しい日本の技術を伝授する!

 

すでに第10弾を迎える番組ということで

人気があることが伺えますが、

この「正しい日本文化を伝えよう!」

という姿勢には違和感を覚える人も多いようです。

 

何がそんなに気持ち悪いのか?

 

今回は私なりにその原因を解明したいと思います。

 

まず、「正しい」文化など存在しない 

これは、多くの人が感じている点なんじゃないかなと思います。

 

食文化が一番わかりやすいと思うのですが、

その地域によって採れる穀物や野菜は違うし、

自然とその土地に合ったアレンジが加えられます。


土地柄によって、

人々の好みの味も違います。

 

 

例えば、

私がイタリアに行った際に食べたパスタは

めちゃくちゃおいしかったんですが、

「正直、日本人好みに合わせたパスタの方が好みかも…」

とも思いました。

 

また、昨今日本ではパクチーがブームですが、

あれはあんなにばくばく食べるものではなく、

ただの香り付けだけらしいし、


日本ではおかずになっている

中国で餃子はそもそも主食も知られ、

水餃子が主流だし、

 

日本に輸入された食文化だって、さまざまな違いを抱えています。

 

また、同じ国や地域の中でも

どんどん文化は変化していきます。

お寿司だって、江戸時代は今で言うファストフードだったと言われていますよね。

 

自分たちの「文化」だって変わっているのに

この番組はその事実からは目をそらして、

相手には自分たちの「正しさ」を押しつける。

 

そんな姿勢が、気持ち悪い。

 

ずっと、そう思っていました。

 

…しかし、最近

この番組の気持ち悪さの原因は、

それだけではないな、

と、気づいたのです。

 

極端な例を拡大解釈している

 

つまり、トンデモばかり集めて、

それをあたかもその地域にいる

全ての人にとって

常識であるかのように演出している

ということです。

 

この番組で取り上げられる外国の人々は、

食材のよさを殺してしまっていたり、

日本のものにリスペクトがなかったり。

 

日本から派遣されるその道のプロたちは

その事実に傷つきます。

 

 

わかります…わかりますよ、

自身がプロであるからこそ、

日本文化によって生計を立てている人々が

食材を台無しにしたり、

真剣に取り組んでいないその姿勢に

腹が立つんですよね。

 

 

 

その道のプロが、

誇りを持たず、敬意を払わない

邪道な人々に腹を立てる。

 

それは、当たり前に存在する感情なのかな

と私は思います。

 

実際に、この番組に何度も出演している寿司職人の小川洋利さんは、

自身のブログで以下のように述べています。

 

ameblo.jp

私の想いは「少しでも多くの人々に素晴らしい日本の寿司文化を教えるのではなく「伝える」事です。

 

寿司ショー(収録)が終わった後はカメラが回っていないところで、相手側からいろいろ仕込みのやり方を聞かれたりします。スタッフは快く引き受けてくれ、相手側に色々な日本の寿司文化を伝えることができます。

 

今、世界中では日本食が大変な人気になっておりますが、人気とともに最近では日本食が「怖い、危険」という声も上がっております。
実際調理場を見ると凄い光景を見ることも多々あります。
年々、世界中で日本食店での食中毒が増え沢山の方が辛い思いをされているのも現状です。
少しでも多くの寿司職人に衛生知識をもってもらい安全で美味しい寿司を作って頂きお客様に喜んで頂くことが私の役割、使命だと思っております。

 

確かに、少なくとも衛生面に関しては、

正しい知識を持たない人に

「プロ」を名乗らせないことは

とても大切でしょう。

 

 


ここで問題となるのは、 

このような番組に出演するプロたちの姿勢ではなく



海外の人々を一概に悪者にしようとする、

番組自身の姿勢だと私は思うのです。


 

例えば、この番組では最初、

プロが正体を隠し、見習いとして

トンデモの人々の元に教えを請いに行く…

という体で撮影が進められます。

 

そして最後の方で、日本から派遣されたプロの

本当の姿がわかるのですが、

トンデモの人々は、その途端に

話し方が敬語になる

(ように番組スタッフが編集・翻訳する)

のです。

 

たぶん、実際には正体がわかっても

話し方を全く変えず、

フランクに接している人もいると思うのですが…


 つまり、本当のプロはトンデモの人々に 

敬われるべき存在である!

と暗に示していることになります。




食品の解凍の仕方をよくわかっていない料理人や

曲に敬意を払わないアニソン歌手・・・。

 

このときプロが

「こんなのダメだ!」と言っている

どちらかというと、

「プロとしてダメだ!」

ということであるのに

 

この番組では

それと日本の「正しい文化」を

独自にアレンジする姿勢とを

ごちゃまぜにして、


彼らが「正しい日本文化」

従ってないことそのものを

笑いものにしていると思うのです。

 

プロの批判対象は、

ただ「プロでない」ことなのに、


番組側では、

「プロでない上にアレンジしまくっている」

ことにまで批判対象を拡大するため、

ある種悪意のある編集をしているのでは

ないでしょうか。

 

 

 

最近、テレビを見ていると

この番組に限らず、

いろいろなものがごっちゃにしているものが

あまりに多いことに

私は気がつき始めました。

 

嘘はついてないけど、

本当のことも言ってない。

 

証拠として差し出しているものに対し、

批判の対象としているものが

大きすぎるんです。

 

テレビに限らず、それは

書籍も気をつけないと、と思っています。

 

論文と違って、

書籍って専門家の審査も受けずに

出版できるからね…。




みなさんも「嘘は言ってないけど

本当のことは言ってない」 

情報源にはぜひお気をつけ下さい。

もちろん私も気をつけます。


 

 

 

今日はここまで。

では〜